レポート
2026-1-9
宣伝美術をみんなでがんばろうの会 イベントレポート
#宣伝美術#トークライブ#みんなでがんばろう

2023年3月18日新栄CENTREにて、小藤琴(老若男女未来学園)、親方(劇団かもしれない)の二人が、ゲストに佐和ぐりこ(オレンヂスタ)さんをお招きし、宣伝美術についてあれやこれやと話すトークライブ「宣伝美術をみんなでがんばろうの会」を開催しました。
宣伝美術の仕事内容から具体的な作業の進め方、意識すべきポイント、さらには事前に募集したアンケートへの回答、「ブラッシュアップチラシ」企画まで、イベントの内容を余すところなくお届けします。
(文字起こし:加納健一/編集:森悟)

登壇者の自己紹介・経歴
小藤琴: 今回このイベントを企画しました、「老若男女未来学園」という団体に所属しています、小藤琴です。よろしくお願いします。 普段は、宣伝美術以外にも制作や出演、演出助手などいろいろな形で演劇活動をしています。 2017年に南山大学演劇部「HI-SECO」企画に入部して、そこから演劇を始めました。 昔から絵を書くのが好きで、デザインにも興味を持っていたのがきっかけで、2年生のときに宣伝美術を始めました。 最初に作ったのは(「HI-SECO」企画の)春期公演の仮チラシですね。めちゃめちゃ大変でした。

小藤: 3年生の頃から外部からの依頼が増えたんですけど、これは私がチラシを作るのがうまくなった訳ではなくて、単純に宣伝美術をやっていた部活の先輩が、就活や就職でなかなか活動できなくなってしまって、それで依頼が増えたんですね。 だからまだまだ先輩に教わっていたいのに…急に頼まれることが増えて、右も左もわからないままワタワタしながらずっと作っていて、その頃から宣伝美術って技術継承が難しいなーっていうのはずっと感じています。 2021年に大学を卒業しまして、仕事との兼ね合いもあって出演はあまりできなくなってしまいましたが、演劇には携わっていたいなと思ったので、宣伝美術の依頼を意識して受けるようになりました。 やっぱり稽古場に行かなくても活動ができるっていうのは、社会人として両立しやすいですね。それで去年、団体(老若男女未来学園)に所属することになって今に至ります。

親方: 共同企画として参加しています、「劇団かもしれない」代表の親方です。よろしくお願いします。経歴としては、名古屋大学劇団新生に入団し、活動を進めていく上で、他に宣伝美術をやる人がいなかったので宣伝美術を始めました。 マイナスな感じで始めたというよりは、色々観劇に行くようになった時にこのチラシいいなあ、これ好きだな、これはなんでそんなに好きじゃないんだろうっていうことを考えるようになって、じゃあ自分で作ってみたら何かその違いがわかるんじゃないかなっていう思いで始めました。 2018年に外部からの宣伝美術の依頼を受けはじめて、ついでに劇団かもしれないというソロユニットを旗揚げしました。

親方: 宣伝美術で好きな作業としては、テキストの配置を考える作業とか、コンセプトに合わせた当日パンフレットや受付チケット作成する作業が意外と楽しいです。 宣伝美術で大変だったことは細かい修正をたくさん出された時。あとデザインがどうしても思い浮かばない時です。 やりがいを感じるときは名前は知らないけどチラシは見たことあるって言われるのが一番幸せです。チラシやグッズが手元に届いた時も幸せを感じます。

佐和ぐりこ: 佐和ぐりこです。オレンヂスタという劇団に所属をしております。劇団では一応主宰とプロデューサーと名乗ってまして、制作という仕事を主にやっております。劇団以外でも制作の仕事を受けて活動しております。 宣伝美術としてはオレンヂスタ美術部という名義で、私だけではなく劇団のニノキノコスターとの共同名義で名乗っております。なのでオレンジスタ美術部って書いてあっても私だけのデザインだったり、ニノキノコスターだったりするんですが、そこは明かさないで使っております。
私は大学入学と同時に、親方さんと同じ名古屋大学『劇団新生』に入団をしまして、そこから演劇も始めましたし、制作とか宣伝美術もそこから始めました。 私、四人兄弟の末っ子なんですけど、一番上の兄がデザイナーで、ちょうど私が大学入った頃にデザインの専門学校に通い始めて、自宅のパソコンにIllustratorが入っていたので、それは使いなよってか言われてやり始めたっていうのがきっかけではありますね。 演劇始めたばっかりでまだ演劇自体を本当に全然知らなくて。紙の上のデザインであれば、まだイメージがしやすいし興味もあったので、そういったきっかけで始めたっていう感じです。
学生時代も制作と宣伝美術を主にやってたんですけれど、制作といっても宣伝美術をやっているだけで手いっぱいみたいな感じで。3年生、4年生とか卒業間近になった時には、外部のデザインも請け負うようなことをしていました。

佐和: そういった経験があって、就職活動する時に何しようかなって考えた時に広告業界面白そうだなと思って、名古屋の広告制作会社に入社しました。 デザインの基礎は、その会社に学生時代にインターンでアルバイトしたときにデザイナーとして学んだことが、今も活きています。 卒業して2年ぐらいして、2009年にオレンヂスタを旗揚げしました。そこからまた演劇活動再開という形で、その頃から一応ニノキノコスターと二人でオレンヂスタ美術部を名乗り始めて、たまに外部からのチラシデザインを請け負うことをしています。 7年ぐらい広告会社で働いて、2015年にその会社を退職することになりまして、今は演劇制作を仕事にやっています。軸足としては制作の方なんですけれど、宣伝美術のデザインも継続して仕事をしているというような状態です。

佐和: 宣伝美術で好きな作業は、アイデア出しなんですけれど、やっていて大変なのもアイデア出しです。あとはロゴ作りも上手くいったりいかなかったりなんですけど、上手くいくとすごく楽しいです。 あと、裏面をきれいに組むとかが私は好きです。情報整理できたなとなると気持ち良い。
ほかに大変だったことは、イラストとかがあんまり描けないので、アイデアを具体的な形にするときに、これだとあんまり思った通りかっこよくない、みたいなところでつまずいたり苦労したりっていうのが私は多いです。 今年、Nagoyaチラシデザイン大賞特別賞をいただいたんですけれども、私のデザインよりもイラストや写真の素材の良さが大きいところが正直あって。でもそういういい素材をいかに生かすかとか、いい素材とどう戦うかみたいなところをやるのがけっこう好きではあります。 あとはさっきも言ったんですけど、情報量が多いチラシが回ってくることがよくあって、まあうちのオレンヂスタの公演のチラシもそうなんですけど。それをどんだけ見やすく揃えて入れるかみたいなのも結構嫌いじゃないです。

宣伝美術のお仕事って?
親方: まず初めに、宣伝美術の仕事ってなんだ?というところを、ぐりこさん、お願いします。
佐和: はい。演劇のチラシは公演の顔だよねっていうのをよく制作の人とかにも言われたりもするし、そういうプライドを持って作りたいなと思っています。
特に演劇のチラシって普通の広告とかチラシとちょっと違うというか、特殊だなって思うところは結構あって。まずだいたいの場合、宣伝する時に商品がまだ出来上がってないんですよね。公演の時に生でしか生まれないっていうのが演劇なので。 例えばお店の食べ物とかでも、実際食べるものは違うけど、こういうものですよって写真撮ったりとかできるし。近いようでいて映画とかでも、もう撮影は済んでフィルムがある状態で基本的にはチラシとかを作ると思うので、映像を写真で切り抜いてチラシに使われたりしているということを思うと、演劇はまだ何も形のあるものは出来上がってない。 宣伝の時点で形になっているのがチラシしかないみたいなところが結構特殊だなとは思っています。

佐和: さらに言うと、チラシでバンバンお客さんを呼べたらそれだけ売ることができるかっていうと、演劇は客席数が限られていて、場所、日時も限られている。 小劇場演劇って、キャパシティとしては200人とか500人とか、まあ多くても1000人、2000人ぐらいしか入れませんよ。でも、だいたいチラシって5000枚とか1万枚とか刷ると思うんですよね。
それがそのまま1万人に配られるかどうかはわからないですけど、でも単純に客席に座れる数よりもチラシで刷られる数の方が多いっていうことを考えると、商品自体に触れる人よりも、そのチラシに触れる人の方が圧倒的に数が多い。チラシを手にしたからって商品も手にできるとは限らないというところもある。
そう思うと演劇作品は見てないけど、チラシは見たことある人がいて当たり前というか。そうなった時に、もう公演終わっちゃって観られません、だとチラシ自体が作品のイメージとして捉えられたり、なんかチラシダサかったからあの作品面白くなさそうだよねって言われたりとか、そういう可能性もある。 作品を観られなかった人にとってはチラシ自体が作品とイコールになっちゃうという部分をちょっと背負いつつ作っています。
親方: ありがとうございます。
佐和: どうですか?お二人は。
親方: そうですね。宣伝美術ってなに?って聞かれたときに、私はチラシを作る人とは言いたくなくて、その公演のメインビジュアルを作り出す人が宣伝美術だと考えています。 宣伝美術ってチラシだけじゃなくて、当日パンフレットとかチケットとか物販も作ったりする人がいて、どこまでが宣伝美術の範囲なの?ってなっちゃうので、私の中ではメインビジュアルを作るっていうこと自体が宣伝美術をすることなんじゃないかなと思っています。
小藤: 非常に勉強になります。
次のページでは宣伝美術のワークフロー、作業の進め方について話していきます。