インタビュー
2023-8-9
吉報 vol.1「こぼす」主宰インタビュー
#吉報#鼎談

8月17日-20日ナンジャーレにて、喜劇のヒロイン、劇団サカナデ、老若男女未来学園の3団体による合同企画、吉報 vol.1『こぼす』が開催される。
本番を約一ヶ月後に控えた7月某日、各団体の主宰が集まり企画の内容やお互いの印象について話した。その内容をお届けする。
(ファシリテーション:今井染/文字起こし:加納健一)
吉報 vol.1『こぼす』
◯日程
2023年8月
17日(木) 19:30
18日(金) 14:00/19:30
19日(土) 14:00/19:00
20日(日) 11:00/16:00
◯会場
ナンジャーレ
地下鉄亀島駅より徒歩6分・名古屋駅より徒歩10分
▽ご予約はこちらから▽
https://stage.corich.jp/stage_main/242495
※公演は終了しました
吉報が生まれた経緯
今回は、喜劇のヒロイン・劇団サカナデ・老若男女未来学園それぞれの主宰にお集まりいただき、合同公演「吉報vol.1『こぼす』」について色々とお話をうかがっていきたいと思います。
ファシリテーションを老若男女未来学園の今井が担当します。よろしくお願いします。
では、さっそく一つ目のトピックとして「吉報」が生まれた経緯についてお聞かせください。
森悟(老若男女未来学園): 僕らはまず新宮さんから「こういう企画やりませんか」っていうふうに話をいただいて、それに乗っかったって感じなんですけど。
新宮虎太朗(喜劇のヒロイン): ゲストスタンスですね。
森: ゲストスタンスではないですよ、もちろん(笑)
岡本拓也(劇団サカナデ): なんで開始直後で揉めようとするんだよ(笑)
森: 一緒にやっていこうねスタンスですよ。
新宮: まあ僕が森さんと岡本さんにお声がけをして一緒に合同で公演をやっていかないかっていう風に話をしたのがスタートですね。
なんでそういうことをやろうと思ったのかっていうのは、各団体がバラバラにそれぞれ本公演をやる機会や、観劇に行く機会みたいなのは多くある中で、同じ団体で定期的に行われる短編の上演会みたいなものがあっていいんじゃないかなと思って。 発表の形としてはちょっとライトなもので。
僕らも単独で公演やったりとかしてたんですけど、活動やっていく時のエネルギーとかコストを内側に求めることが多くなっていて、劇団の活動っていうのが内向きになりすぎなところがあるなと感じていて。 それがきっかけで活動自体が止まっちゃうケースも多々ある。
他の二団体が頑張って活発に活動していくぞっていうところを目の当たりにしている中で、できる限り三団体が今後も元気に活動し続けて、作品の発表をやっていけたほうがいいんじゃないか。 共同体というか、連携を取り合って仲間意識を持った状態で、各々が活動しているのがいいのかなと思って、お声がけをしたっていうような経緯になります。
声をかけられたお二人はどういうお気持ちでしたか?
森: 僕は嬉しかったですね。喜劇のヒロインさんの公演を何回か見ていて、面白い団体だし、勝手に追いかけているような感覚があったので。 活動規模の広げ方というか、東京でも公演をやられていたのもあって背中を見ていた感じだったんですけど、横並びで一緒にやっていこうというふうにお声掛けいただけたのは嬉しかったです。
岡本: 僕も同じような感じで、あと問題意識も結構近いのかなと思っていて。継続性の難しさ、単独で公演を打ち続けていくっていうのがめっちゃ体力がいる。 だからそこでこうこういう場があるのはすごくいいんじゃないかなという気はしてます。
森: 単独で行う公演にコストとかエネルギーがすごくかかるっていうのは僕も共感していて。フェスとか演劇祭というかそういうイベントみたいなものに参加できると単独公演ほどの体力を使わないながらもコンスタントに作品を発表し続けられるからいいんですけど。 なので継続的に合同で公演をやっていくっていうのはそういう意味でとてもいいことだなと思いました。一緒になって企画を盛り上げて、今後も続けていきたいなと思ってます。
お二人とも前向きな気持ちになれるようなお声がけだったと。
森: そうですね。でもちょっと怖くもありましたね。 やっぱり面白い作品を他の2団体が作ってくるだろうと思ったので、僕らが一緒に作品を発表した時にどうしても見比べられる形になって、それで見劣りした場合ちょっと恥ずかしいなとか、中途半端なことできないぞという。 気合いを入れて臨まなきゃいけないというプレッシャーも感じました。まあそれはどんな公演でもそうなんですけど…
新宮: それはどんな公演でも気合いを入れて臨んでいただかないと。
森: はい。まあ今回はお互いに年齢も近いので、プレッシャーはいつも以上に大きいなと思います。
新宮: なんでこの2団体を呼んだのかというと…
森: それ聞きたいですね、ぜひ。
新宮: どの団体もちゃんと面白いものをすでに作っているから、全然そういうのを考えずにやれるんじゃないかなって思って。
森: あー、変な意識を持たずに。
新宮: そうそう。
森: 純粋に面白い作品を作ろうっていう。
新宮: そうなんですよ。例えば劇団サカナデさんだと第三回公演の『越えられない夜も、越えて』は面白いなと思って、やっぱこういうものを作れる人達っていうのはなかなかいないなと見ていて思ったんですよ。 今後も面白い劇を作る未来が見えた。お客さんとして次の公演も行こうってなったんですよね。
越えられない夜も、越えて
劇団サカナデが2022年12月に円頓寺Les Piliersにて行った演劇公演。
脚本・演出:岡本拓也
出演:坪尾光起、七星束子(青年団)、武藤ののか(演劇ニッケル)
新宮: なので一緒にやったら僕も刺激になるんじゃないかなと思った。 だから、どんな作品が出てくるのかっていう点において、不安とかは全く無くて、もう期待しかない。 絶対に来てほしいという気持ちがありますね。一作品だけでも元が取れるんじゃないかっていう……あの、止めてくださいね。僕がから回ってきたら。
森: いやいや。
新宮: ぜひ止めてください。
岡本: 僕が止めなきゃいけなかったな。二個前とかで止めないと。
森: 新宮さんばっかり喋ってたんだと思われちゃうとね。
新宮: そうそう。
岡本: 難しいんだよ。冗談と冗談じゃないラインが。
新宮: 合いの手を入れてくださいよ。
・・・
岡本: まあお互い作品は見てるもんね。
森: そうですよ。なんか意識はしてますよね、あー活動してるなあっていう。 お互い変に壁を作るよりは、協力してやっていこうという姿勢をお客さんに対して見せていくことにも意味がありそうな気がするんですよね。
新宮: そうですね。
岡本: 応援しやすいような気がするんだよね。
新宮: そもそも演劇やってることが認識されていかないといけないですから。 こんなに面白い物を作ってるんだぞっていうことがひとりひとり色々バレていくといいですよね。
森: だから広い層にアプローチしていきたい。 一団体のひとつの作風だけでガンガンいくよりはこういう三団体のいろんな作品を見られるみたいな機会をこっちから用意しておくと間口は広がりそうな気がします。
岡本: 結構作風が違うもんね。だいぶいい具合に違う。
森: やっぱり演劇を観たことない人がどこかの劇団の単独公演をいきなり観に行くっていうのは、上演時間も長かったりして厳しいと思うので、吉報みたいな機会を入り口にしてもらえるとすごくうれしいですよね。
お互いの劇団の印象について
先ほども話には出ていましたが、お互いの団体に対しての印象を改めてお聞かせください。
岡本: じゃあ僕からの印象で言うと…喜劇のヒロインは活動を広げて東京で公演やったりとかもそうだし、そもそもが戯曲とか作品のレベルが高かったから、もっとバレていいなあっていうのはあって、僕はだいぶ前から面白いよって思ってました。学生の時に見てた時でもうかなりよかった。
新宮: そうなんですね。
森: お二人は「HI-SECO」企画の先輩後輩になるわけですよね。
岡本: そうですね。
南山大学演劇部「HI-SECO」企画
南山大学を拠点に活動する学生劇団。
年数回の主催公演を行っているほか、年によってはさまざまなイベントや演劇祭でも上演をしている。
岡本、新宮の他にも名古屋の演劇シーンを中心に活躍する俳優、スタッフを多数輩出。
森: その頃から関わりはあったんですか?
岡本: 喜劇のヒロインが活動し始めた後に、新宮が「HI-SECO」に入ってるから、喜劇のヒロインの最初の公演はお客さんとしてみてただけで面識はなかった。
森: 後輩ってよりは喜劇のヒロインの方が先なんですね。
岡本: そうそう。最初に観たのは名古屋学生演劇祭だと思うけど、そのときにやばいなあっていう感じでしたね。
名古屋学生演劇祭
毎年夏に行われ、東海地区の学生劇団・学生ユニットが参加する演劇祭。
今夏も第12回名古屋学生演劇祭が開催予定。
喜劇のヒロインは、2016年の第5回名古屋学生演劇祭で観客賞を受賞。
岡本: 老若は『アザンシアコント vol.1』ですね。どこから持ってきたセンス、感覚なんだろうみたいなのがあって。明確な新規性がある。映像とかそっちの方に最初目がいくと思うんだけど、別にそれだけじゃなくて、セリフとかも謎というか、新しいというか、不思議だなあっていう感じです。 あと、神奈川でやっていた『シーユレーター』も映像だけど見て、これからより戯曲と、今持ってる映像とかの技術が相乗効果になって爆発していきそうだな、と。いい意味での怖さっていうかこうこの後どうなっていくのかの分からなさみたいなのが魅力なんじゃないかな。
アザンシアコント vol.1
老若男女未来学園が2022年9月に実施したコントオムニバス公演。
作・演出:森悟
スーパーバイザー:オノウチハルカ(劇団ハイエナ)
シーユレーター
老若男女未来学園が2023年3月に、かながわ短編演劇アワード2023演劇コンペティションにて上演した演劇作品。 その後5月に東京都三鷹市のSCOOLにて、本公演としても上演。
作・演出:森悟
出演:かすがいこと子、七星束子(青年団/劇団サカナデ)、森悟
新宮: そうですよね。僕もそれはすごく思います。新しいことをやろうみたいなスタンスがどのお客さんにもとりあえず伝わる上演形態で、何か大きな人につかまったらすごいところまで引っ張ってもらえそうな作品を作ってるんだろうなあっていうのは見てて思ったし。 あとしがらみがない感じもあって、ぶっちゃけ別に演劇じゃなくていいぐらいの精神性で作ってるんじゃないかっていうところもうらやましいなあと思ってます。ちょっとずるいなみたいな。
森: 僕自身も、ずるいなとは思いながらやってますね。目新しい要素を入れていって興味を引きたい気持ちが結構明確に最初からあって。これからはそういう作り方をしながらも、作品の内容とか、戯曲とかにも目を向けられるようになっていけたらいいなと思ってますけど。とりあえず面白いネタが尽きるまで頑張りたいです。
老若男女未来学園から見た他の二団体については?
森: まず喜劇のヒロインさんについて…何度か公演を見ているんですが、やっぱり戯曲が面白いなって言うのが最初の印象です。お話自体は結構軽快な感じで、すごく観やすいんですよ、笑えるところもあって。でもそこにクリティカルな問題提起を紛れ込ませてあるのがすごくいい。同年代でこのクオリティでやられるとちょっと怖いな、やだなっていう感覚になりました。悔しいってことなんですけど。 で、最初は新宮さんっていう人のことをよく知らなかったんで、すごいセンスの塊で強い力を持った人なんだろうと思ってたんですけど。あるとき、「ナビイチリーディング」っていうので新宮さんの台本をやってたときに聞きにいったんですね。 そこで新宮さんの作品に対してとか、観客に対しての態度がとても誠実だなって言う印象を受けて、作家としては理想的だなと思いました。そのうえで作品を見返すと、そういう人柄がよく現れていていいなって……ちょっとまとまらないですけど、そういう印象です。
ナビイチリーディング
日本劇作家協会東海支部により定期的に開催されているリーディング企画。 戯曲のブラッシュアップを目的としており、上演後には俳優や観客も交えたディスカッションが行われる。
新宮: 本当のところはどうか分かりませんけどね。
森: そう、ここで「本当のところはどうか分かりません」と一応言っておくバランス感覚もいいですよね。
岡本: からめとられた(笑)
新宮: その「ナビイチリーディング」の話をちょっとすると、名古屋学生演劇祭のときに公募で集まった役者さんと作品を作るってやつで『なごやかな』っていう作品をやったんですけど、その台本をブラッシュアップするイベントが「ナビイチリーディング」というもので、岡本さんが入ってる日本劇作家協会東海支部が定期的にやってるイベントなんです。 そこに森さんがいたってことですか。
森: そうです。
なごやかな
2018年9月、第7回名古屋学生演劇祭の公募枠(俳優を公募し、特別枠として上演される)にて、作・演出:新宮虎太郎で上演された作品。
同年12月にナビイチリーディングのブラッシュアップ戯曲としてリーディング上演。
新宮: あの時は結構言い合いじゃないけど、色々やりとりがあった気がします。
森: 同世代の作家が戯曲に対してしっかりとした考えを持ってるっていうことが、当たり前なんですけどあの時は新鮮でした。僕は結構思いつきで書いたり、なんかその場で面白いと思ったことをポンポン放り込んだりしてあとで収集をつけていくので、あんまり考えがまとまってないことが多かったりするんですけど。 作品に対して一貫した考えがあって、それを口にして説明したりとか、ちゃんと議論ができるレベルまでこだわりを持っていることに素直に感心したんですよね。感心というと上からの言い方ですけど、これからはそういう感覚で僕もやっていこうと思いました。
新宮: その後の森さんのご活躍の糧になれたなら嬉しいですよ。
森: 本当に感謝していますよ。開催してくださった劇作家協会東海支部さんにももちろん感謝してます。
・・・
森: その流れで劇団サカナデさんの印象ですけど…僕はあの、結構前にカフェでやられてた公演をみました。
岡本: そうなんだね。『陶酔』というタイトルで。
陶酔
劇団サカナデが2019年7月〜9月に名古屋、岐阜のライブハウス、カフェなど3会場にて上演した演劇作品。
作・演出:岡本拓也
出演:坪尾光起(フリー)、中村優希(名城大学劇団「獅子」)、武藤ののか(演劇ニッケル)
森: 結構前なのであんまりはっきりとは覚えてないんですけど…独特な作風で面白かったんですよ。だからあのような作品を今後も観られるのかなと思っていたんですけど、そこからちょっと活動期間が空きましたか。
岡本: そうだね。『陶酔』から次の公演までは二年だから、けっこう空いてるね。
森: その次にサカナデさんを見たのが去年の『越えられない夜も、越えて』なんですよ。それが『陶酔』からすると結構作風が変わってて。
岡本: そうですね。
森: 純粋な会話劇になっていた。『陶酔』はリアルな人の会話ってよりは演劇っぽくない印象を受けたというか、パフォーマンスとして見てたんですね。だからその後に会話劇になっていてびっくりしました。あの『陶酔』をやっていた劇団さんなんだって最初気づかなかったぐらいですね。
岡本: そうね。なんかいろんな文脈の中で変わっていて
森: それで『越えられない夜も、越えて』は会話劇をこれだけやろうとするのがすごいなという印象がありました。 変なふざけがなくて、面白いでしょみたいな冗談もあまりなく、本当に淡々と話が進んでいくのが逆に挑戦的だなと思ったんですよ。僕だったら、途中で耐えられなくなっちゃうんで。そのスタイルがかっこいいなと思いました。
岡本: ありがとうございます。でもくすぐりみたいなものを本当は入れたいと思ってはいるんだよね。 自分の中ではふざけてるっていうか、真面目ふざけという感じなんだけど、それが客席と一致しなかったりみたいなのが未だにあって。だからポジティブにいえば、実直に真面目なことやってるとも言えるけど、そこがもっとチューニングができるといいんだけどね。
森: でもあの雰囲気を一時間の尺でキープできるのがすごいなと思いました。
岡本: ありがとうございます。一回目の公演が僕の中でだいぶ前だったから、その話をしてくれて嬉しいです。
森: なんか覚えてる部分と覚えてない部分とありましたけど。
岡本: いや、ありがとうございます。
次のページでは「吉報」というユニット名の由来や、「こぼす」という共通テーマについて話していきます。